一夜限りでは終わりたくない
第2章 曖昧な関係
「おい、起きろよ…いつまで寝ているんだ」
私の耳元で翔也さんは大きな声を出した。
「えっ…えっ…お…おは…おはようございます。」
驚いた私は思わず変な挨拶をしてしまった。
すると、目を細めて楽しそうにクスクスと笑う翔也さんの顔が飛び込んで来た。
彼はすでにスーツに着替えを済ませている。
「翔也さん…いえ…藤堂副社長、申し訳ございません、すぐに着替えます。」
「わかった…部屋の前で待っている。一緒に朝食に行こう。」
急いで着替えながら考えていたことがある。
ここは藤堂副社長のご実家なので、当然ご家族がいらっしゃるはずだ。
まさか家族の中で朝食なんて、どういう顔をしたら良いのか分からない。