一夜限りでは終わりたくない
第3章 元カノ
高山リーダーは私を疑うような表情で私を問い詰めたのだった。
「今…住んでいる場所は…い…言えません。」
藤堂副社長にお世話になっているなんて言えるわけがない。
翔也に迷惑はかけたくない。
高山リーダーは先方の専務に深々と頭を下げた。
「すぐに担当を変えますので、どうか契約はお願いできますでしょうか。」
すると、専務は腕組みをして目を閉じた。
「どちらにしても、今日はお引き取りください。次のご担当によっては契約致します。」
どうしてこんな事になってしまったのだろうか。
私は専務に向かって声を上げた。
「専務!すべて誤解です。私は決して騙したり誘惑したりなんてしていません。専務!」
叫ぶように声を出している私の腕を高山リーダーが掴んだ。
そして、睨むような目で私を見たのだった。
「もうこれ以上問題を大きくしないでくれ。すべて君の責任だ!」
高山リーダーは私の腕を掴んだまま、深々と一礼すると、私を引っ張るようにしてその場を後にした。
会社に戻るとすでに今回の契約が白紙になったことが皆に伝わっていた。
高山リーダーが連絡したのだろう。
皆がひそひそと私を見て何か言っている。
そして、高山リーダーが私の後任を伝えようとした時、男性の大きな声がその場に響いたのだった。
その声の方を向くと、そこに居たのは藤堂副社長だ。
皆が藤堂副社長の登場に驚いている。
「噂を聞いて来てみたら、こんなことになっているとはな…桜井さんの後任担当として次回は僕が行く。高山リーダー、それで何か問題はあるかな。」
高山リーダーは目を大きく見開いて動揺している。
「そ…そんな…問題なんてございませんが、藤堂副社長に行って頂くなんて…」
藤堂副社長はさらに言葉を続けた。
「先方には担当の桜井さんにも同行してもらう。彼女の疑いも晴らして来たいからな。」
高山リーダーはその言葉に大きく首を振った。
「お言葉ではございますが、桜井さんが今回の原因なんです。その桜井を連れて行くなんて無謀ですよ。」