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お題小説 drifter (漂流者)

第1章 漂流者(drifter)

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 リア充な女…
 と、いうのは真っ赤な『ウソ』『嘘』である。

「ふうぅさてと」

 カチャ、カチャ、カチャ…

 パソコンのキーボードを叩き、マウスを動かしながら様々な資料や、色々な他人の『SNS』等を検索、閲覧し、そして使えそうな当たり障りのない写真をスクショし、自分の…
 この『彩美』のインスタにアップしていく。

「うーん、今日のランチはどれにしようかなぁ…」

 カチャ、カチャ、カチャ…
 
 キーボードを打ち…
「よしっ、1800円のカルボナーラ、デザート付きのランチにして…と」

 カチャ、カチャ、カチャ…

「うーん、今夜のお友達のお誕生日パーティーの会場をどこにしようかなぁ?」

 カチャ、カチャ、カチャ…

 都内の有名なホテル等の検索をしていき…
「あ、ここがいいわ、この渋谷の最新の
『セルリアンタワー東急ホテル』にして…と」
 ホテル内の様々なショットを検索、閲覧し、使えそうな写真を集めておく。

「よし、後は夜9時過ぎ辺りにアップすればいいかな…
 あぁお腹空いたぁ」

 そう呟きながら…

 ズルズルズル…
 と、カップ焼きそばをすする。

「あぁ美味しいぃ…」
 わたしはそう呟きながらカップ焼きそばをすすり…
「ふうぅ…」
 ゴクゴクと喉を鳴らしてコーラを飲む。

「やっぱりカップ焼きそばにはコーラよねぇ」
 と、思わず至福の声を漏らしてしまう。

「おっ…」
 するとスマホのインスタ画面上にDM着信のマークが付いた。

『美味しそうなカルボナーラランチですね、どこのカフェなんですか?』
 よくDMを交わしている『流星』さんからであった。

『会社近くのいつも行くカフェですよ』
 と、当たり障りの無い返信をする。

『うわ、都内勤務だと素敵なカフェとかたくさんあって羨ましいです、それに今夜はパーティーだなんて…
 私は田舎なんでチェーンのファミレスと居酒屋くらいしかなくて(涙)』
 
「フフ…」
 わたしはそんな『流星』さんの返信メールを読んで…
 気持ちが昂ぶり、思わず笑みを漏らしてしまう。

 昂ぶり…
 そうそれはわたしの『承認欲求』という心の欲する想い。

 そしてこのインスタは…
 その『承認欲求』という自己顕示欲と自己満足の昂ぶる想いを満たす為の自作自演の『嘘』『ウソ』の世界の表現のひとつの手段であるのだ。


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