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Kalraの怪談

第31章 三十一夜目:自殺の名所


「見間違いだと思ったらしいが、どうにも気味が悪かったから早く帰ろうって言ったんだって。この話を聞いたのが昨日だったんだ。」

なるほど、怖かったのか、正気を疑われるのが嫌だったのかしたのか、話せたのがやっと昨日だったというわけか。

「その時も、B子は怯えていた。『もしかしたら私も引き込まれるかも』って。だから、昨日は帰さないで俺の家に泊めたんだ。それで、今朝は普通に戻っていたのに、さっき、急にテレビを見ていてふらりと立ち上がって、行かなきゃ・・・って言って、出て行ったんだよ」

異常な話だった。B子はL岬で何かに取り憑かれて、フラフラと岬に引き寄せられているとでもいうのだろうか?

「とにかく、もう、L岬しか心当たりがないのなら、行ってみよう。」
俺はAを助手席に乗せて車を走らせた。
「なあ、B子は携帯かなんか持っていないのか?」
「それは何度か試しているが、出ない。」

結局、1時間以上もの間、特にいいアイデアが出るわけでもなく、L岬の入り口に到達した。俺たちは、携帯のライトを頼りにL岬突端を目指した。
しかし、そこにはただ真っ暗な海が広がるだけで、B子がいる訳もなかった。

結局、B子はその日から姿を消してしまった。

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