
スイーツ・スイーツ
第3章 攻防戦の果てに
…理恵子の日記……
・
×月×日。
佳奈恵が一般病棟の個室に移ったというので、
人命救助で表彰されるだろうというニュースとクラスの寄書きを持って見舞いに行った。
3階に着いたら、病室に入りきれない陸上部員が廊下まであふれていた。
室内からは佳奈恵のすすり泣きが漏れ、部長かマネージャーあたりの慰めの言葉が途切れ途切れに聞こえた。
再起不能、という言葉が聞こえた。……医師の宣告があったと考えるのが自然だろう。
まずいな、出直しだ。
自転車だから、気晴らしに図書館にでも行こうと思い、その場を離れようとしたら、病室の中から、制服の女子中学生が走り出てきて、私にぶつかった。
しかし、謝りもせずに、脱兎のごとく彼女は逃げる。
あの娘に違いない。確か名前は入江若葉――。
「捕まえて!」
佳奈恵が叫んだ。
高校の陸上部が取り逃がすはずはないが、それでも屋上(5階にあたる)まで追いつけなかったことに自信喪失した部員もいたそうだ。
私が屋上に着くと、部員数人がフェンスから若葉を引き離しているところで、やむを得ないとはいえ、かなり手荒だった。
泣き叫ぶ若葉は、地面に押さえつけられても、なお抵抗する。
仕方ないな。私はハンカチをその口に押し込んだ。
泣き叫んでうるさいし、舌を噛まれても困る。
それでやっとおとなしくなった若葉を病室へ護送した。
佳奈恵は般若の形相で、ベッドに半身を起こしていた。
部員から状況を聞いたあと、無言のまま、若葉を思いきり殴った。
「助けなきゃよかった! こんな命を粗末にする奴、助けなきゃよかった!」
血を吐くように叫んで、号泣した。
若葉も声をあげて、泣き崩れる。
どう収拾つければいいんだろう?
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×月×日。
佳奈恵が一般病棟の個室に移ったというので、
人命救助で表彰されるだろうというニュースとクラスの寄書きを持って見舞いに行った。
3階に着いたら、病室に入りきれない陸上部員が廊下まであふれていた。
室内からは佳奈恵のすすり泣きが漏れ、部長かマネージャーあたりの慰めの言葉が途切れ途切れに聞こえた。
再起不能、という言葉が聞こえた。……医師の宣告があったと考えるのが自然だろう。
まずいな、出直しだ。
自転車だから、気晴らしに図書館にでも行こうと思い、その場を離れようとしたら、病室の中から、制服の女子中学生が走り出てきて、私にぶつかった。
しかし、謝りもせずに、脱兎のごとく彼女は逃げる。
あの娘に違いない。確か名前は入江若葉――。
「捕まえて!」
佳奈恵が叫んだ。
高校の陸上部が取り逃がすはずはないが、それでも屋上(5階にあたる)まで追いつけなかったことに自信喪失した部員もいたそうだ。
私が屋上に着くと、部員数人がフェンスから若葉を引き離しているところで、やむを得ないとはいえ、かなり手荒だった。
泣き叫ぶ若葉は、地面に押さえつけられても、なお抵抗する。
仕方ないな。私はハンカチをその口に押し込んだ。
泣き叫んでうるさいし、舌を噛まれても困る。
それでやっとおとなしくなった若葉を病室へ護送した。
佳奈恵は般若の形相で、ベッドに半身を起こしていた。
部員から状況を聞いたあと、無言のまま、若葉を思いきり殴った。
「助けなきゃよかった! こんな命を粗末にする奴、助けなきゃよかった!」
血を吐くように叫んで、号泣した。
若葉も声をあげて、泣き崩れる。
どう収拾つければいいんだろう?
