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スイーツ・スイーツ

第2章 復讐への序章

「このサディストが清水鏡子。こっちの変態が入江若葉」

身も蓋もない紹介だが、反論できないのが悲しい。
言うまでもないが、もうブラウスはちゃんと着ている。

「気合いを入れるついでに、筋肉をほぐそうとしてやってただけですが」
「嘘おっしゃい」

ピシリと鏡子に言う、岩屋理恵子先輩。文芸部部長で図書副委員長である。さすがに3年生、威厳がある。

嘘とされた鏡子の言葉も、半分は正しいのだが。

――とにかく、二人の新入生は、

石橋瞳。
五島菫。

という名前だ。

二人とも雰囲気はよく似ていて、清楚そのものだ。

「眼鏡っ子が欲しかったわね」
「確かに、文芸部には一人ぐらい必要ですね」
「あ、かけましょうか」

理恵子先輩、鏡子、菫ちゃんの順に発言し、
菫ちゃんが銀縁をかけた。

「あ、いい感じ」
「文芸部らしくなってきたわ」
うん、私もそう思う。

作業台を囲んで座る5人の女子高生。
なんか絵になるよね。

ところが、

「入江先輩、私のことがわからないんですか?」

私に向けた、五島瞳ちゃんの鋭い言葉が現実に引き戻した。

「えっ?……なんのこと?」

「聞いてませんか。
私は松山佳奈恵のいとこです」

まさか!
一瞬、場が凍りつく。

訳がわからないのは、菫ちゃんだけだ。
(マツヤマカナエって、誰?)顔にそう書いてある。

「そうか……とりあえず、呼び捨てはだめよ。いくら身内でも」
「あ、はい」

理恵子先輩がたしなめた。確かに、佳奈恵先輩だな。

「そうか、松山先輩のね……で、若葉に何をしたいのかな?」

私が怖くて訊けないことを代わりに訊いてやるとばかりに、鏡子が言った。

「入江先輩が松山先輩に何をしたか知らないんですか?」
「知ってるよ」
「知っているなら、話は早いです。
仇討ち以外にやることありますか?」
「……了解」

あっさりと、鏡子。

目を閉じ、深い諦念を味わう私。

それぞれの思いが交差した。

ひとり取り残された、菫ちゃんが気の毒だった。

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