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国家特別プロジェクト

第2章 初回プログラム

そして続けて話し始める。
「この部屋では行いづらいですから、地下2階の体育館へ移動しましょう」

参加者が一斉に立ち上がる。
私とこころちゃんも列に加わり、廊下を歩きながら小声で話した。

「総理大臣が推奨って……なんかすごいね😅」
こころちゃんが半ばあきれたように笑う。

「うん……逆に逃げられない感じするよね」
そう答えた私も思わず苦笑した。

不安と期待と、変な安心感。
全部を抱えたまま、私たちは体育館の扉に近づいていった。

地下2階の体育館はシンプルながらも整然としている。
広さは充分にあり、天井も高く圧迫感はない。
床は柔道用のような柔らかいマット素材で、水はけも良い。
清潔感が漂い、まるで「実習のために特別設計された空間」だった。

私たち参加者は男女が交互に並ぶ形で円になって座らされた。

ステージ上に立ったおじいちゃん講師がマイクを握り、背後のスクリーンを指し示した。

「皆さん、これから“尿道クリーニング”について詳しくご説明します🖋️」

ざわ…と空気が揺れる。
スクリーンには図解とイラストが映し出されていた。

「やり方は至ってシンプルです。皆さんには専用の機械を装着していただくだけ。
スイッチを入れれば、自動的に作動します。複雑な手順はありません」

少し間を置き、講師は誇らしげに続けた。

「なぜこれほど分かりやすい設計になったか、ご存じですか?
……そうです。これは**内閣総理大臣が直々に“もっと国民が使いやすく”と指示を出されたからなのです🤩」

「おぉ……😮」と、誰かが小さく声を漏らした。

講師はさらに力強く言う。

「“健康のための施策は、誰にでも分かりやすくなければならない”。
その理念のもと改良されたのが、このクリーニング機械なのです。
――さすが、国民のことを第一に考える総理大臣でしょう!」

自然と、会場に小さな拍手が広がった。
最初は戸惑い混じりだったけれど、次第に「まぁ……総理がそこまで言うなら🤥」という空気が生まれる。

私は隣のこころちゃんと目を合わせた。
彼女はくすっと笑って「ちょっと総理の株、上がったかも🤭」と囁く。
私も思わず頷いた。

――国家の強制じゃなく、国民を守ろうとする温かさ。
そう感じてしまうと、不思議と心の中の抵抗感が少し和らいでいった。

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