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脳内ショートストーリー

第3章 【真咲莉緒と伊藤蒼真〜上司と部下の恋〜】






知らんがな!!
動揺するかな、と思って聞いてみただけなんですけど



「全然違ったんならごめんなさい、調子に乗りました」



緊張感の走る車内で、
右折レーンに入りウィンカーの音が鳴る
ハンドルを握る指がトントンしていて……



「いや、違わないから焦ってる……俺、そんな顔に出てたか?」


「え…?」



暗い車内だったけど、頬を赤らめている様子が覗える
違わないって言った
ちょっと待って、まだ濁すと思ってた
それを愉しんで駆け引きみたいなのが続く展開じゃ
ないんですか!?
あっさり認めちゃったよ……



照れてるのを見られまいと目から下、
手で覆っちゃってさ
そういうの、可愛いって思っちゃう私もドキドキしてる
な、何か言ってくださいよ
部長の番ですよ



「はぁ……ヤバいな」



待って、変な空気です……
どうしたら良いんですか
ヤバいって何が?
あと少しで家に着いちゃう



「真咲……明日からも宜しく頼むな?」



無機質にも
“目的地は右側です”とナビが終了してしまった
ゆっくり停車する……



さっきの会話、なかったことにする感じ?
まぁ、焦らないでおきますね
仕事は仕事で割り切ってやりますから



それからは本当に忙しくて甘い空気にすら
辿り着かない日々
部長もクライアントとの打ち合わせが連続で
入っていて退社する頃にはまだ戻っていない事が続くの



しかも翌朝には仕事の修正箇所や新たな案件の山が
デスクに置かれている
何時に戻ってこの仕事熟したんだろう
最近、「真咲ー」がなくて寂しい、かもです



「寂しいの?」


「えっ?」



声、漏れてた?ってくらいタイムリーな倫子の一言
隣のデスクでニヤニヤされてる



「お目当ての上司さん、さっきも戻って来ては会議のオンパレードだもんねぇ」


「お目当てのって……やめてよ」





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