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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


 けれども遅かった。次の瞬間、腹に鈍い痛みが走る。


「う……」


 はっとした時にはすでに、メイドの拳がみぞおちにめり込んでいた。


「……った!」


 腹を抱えてしゃがみこんでしまった大山の手から、手錠が奪われる。

 同時に首にかけてあった名札も奪われ、大山は焦った。


「俺の……っ」


 名札を奪われてしまえば、その時点で失格だ。このゲームに参加できなくなる。

 つまり、温泉旅行が永久に手に入らなくなるということ。

 とっさに大山は名札を奪い返そうと腕を伸ばすが、ビニール紐を掠めただけ。腹が疼いて再びうずくまってしまった。

 メイドは名札を開き、中に挟んであった名前の書かれた紙を破り捨ててしまう。

 ケースだけになったそれを大山の前に放り、大山を見下ろしながら、メイドは言った。


「よっしゃ。一人目」

「やっぱり宵じゃないか……っ」

「あったりめーじゃん。……むしろ誰だと思ったんだよ」


 返ってくるのはいつもの、表情に乏しい呆れたような声だ。

 大山は思う。誰だかわからなかったからこそ戸惑ったのだ。


「だっておまえ……胸……」

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