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第16章 妄信的なナニカ


 しかし、そんなことよりも千尋にとって重要なのは、文芽から奪還した鞄にやはりネクタイが入っていなかったということだ。

 悠理の話を聞いて大方諦めてはいたのだが、あれを仕掛ける手間を考えれば期待せずにはいられなかった。

 ――今日徹夜で取り付けるか……。

 そう鞄を閉じながら小さく息を吐き、そのまま鞄を肩にかける。


「…………」


 自分で行ったその動作に、ついさっき同じようなことをしていた文芽の姿を思い出した。

 それと同時に文芽へのいら立ちとも憎悪ともいえる感情が湧きあがり、千尋は露骨に顔をしかめる。

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