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狼と白頭巾ちゃん

第8章 それぞれの想い

あの時、ライラの微笑みを見てしまった時、シンは怯んでしまった。

いつ木陰から飛びだして、この甘い匂いを放つ、柔らかそうで旨そうな少女の身体に牙を向けようかと、その時を狙っていたはずなのに……。

シンは、嗚咽が漏れそうな口を、その大きな手で覆い、ただ、頬を伝い流れてゆく幾筋かの涙の熱を感じながら、喜び思った。

あの時、彼女を襲わなくて良かった…と。

そして、この自分に寄せられるライラからの信頼を、決して裏切りはしない、と、自分に言い聞かせたのだった。

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