テキストサイズ

おとなりさま

第1章 カラフルオウム




そうなんだ、とクスクス笑い、
まぁ頑張りなよ、と左肩をポンと叩かれた。


「あ、コピー機あいたら
内線入れてくれる?
私も、大量に資料のコピー頼まれちゃってさ。」


よろしくね、と先輩は立ち去った。
僕に彼女がいると勘違いをしたまま。



井上先輩。

僕の3つ上で、大学のサークルで
一年だけど一緒だったんだ。
世話好きで、皆のお姉さんのような存在。


先輩が卒業してから
連絡することもなかったけれど、
先輩が入社した会社に、
偶然、僕も入って再会。



部署は違うけれど、
何かと気にかけてくれる。
なんとも心強い。









大量のコピーがやっと終わり、
井上先輩に連絡を入れた後、
休憩室に向かった。

これから大量の資料を
ホッチキスで止めていくんだ、
眠気覚ましにコーヒーを一杯。



窓の外を眺めながら優雅に頂く。


「よぉ、柏木ィ。」


緩い声が聞こえた。
同期の安藤だ。

僕は、左手を挙げて答える。


安藤は僕の肩に
腕を回して引っ付いてきた。


右肩が痛い。



「ようよう、俺を差し置いて
昨日はいい気分でしたでしょう。」

「は?何の話だ。」


コレ、コレ。
と安藤は小指を立ててちらつかせた。


酔っ払いのオヤジか。



「何を言ってるんだ。
僕は彼女なんかいないぞ。」


「嘘つけ、昨日
赤い花柄ワンピ着た女の子
連れてたじゃねーか!
絶対、隣にいたのはお前だね。」



赤い花柄ワンピース。
流石、カラフルオウムさん。


確かに君は、この格好してましたね。


目立ちますな。



安藤は、変にごまかしたり嘘をつくと、
かえってややこしくなりそうな相手だ。

此処は正直に言おう。



「あれは、幼なじみ。
言っとくけど、僕はアイツのこと
ちょっと苦手なんだよ。」


よって疑わしい関係ではないです。
オーケイ?

安藤をチラリと見ると、
疑いの眼差しでいっぱいだった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ