
たまゆらの棘
第3章 螺旋
「今日は俺の誕生日だからな。」サムは言った。「誕生日?確か3月だと…」
「月の誕生日だ。8日。」「…ああ。」そういう事か、倫は納得した。コツ、コツという音が、良く磨かれた黒い床に響いた。ここはオックスフォードとケンジントンの間にある教会に二人は来ていた。平日の午後の礼拝堂には二人以外、誰も来ていなかった。「月一度、俺は自分の誕生日にここへ来て、神から祝福をもらい、懺悔する。」そう言ってサムは長椅子の間に跪いた。「おお。我らの贖い主よ。弟子達にみ姿を現されたように、我らのうちにも現れよ。我らに祝福を…」倫も跪くようサムに言われた。倫は言われた通りにした。「倫。俺達は罪深い。懺悔する。お前を犯したことも、金を取ったことも、み前に隠す事は出来ません。主よ、お赦し下さい。」サムは手を合わせて暫く黙想し、そして目を開けると胸で十字を切った。「…サム。…自己満足に懺悔してどうなる…大切な事は…どう生きるかだ。」倫は言った。「最もだ。…倫、俺を赦してくれ。」サムは倫の前で手を組んだ。「…人を裁くのは人ではない、神だと中学生の時に習った…」倫は言った。「僕は…罰を受けているんだ…」倫は続けた。「罰?何の罰だ?」サムは目を開けて言った。倫は何も答えなかった。それにしてもサムが教会に月一度来て、懺悔するなんて倫には意外だった。サムももしかしたら自分と同じように何か幼少期から、屈折するものを抱えているのかもしれないと倫は思った。…たとえ、口先だけでも、祈っていたサムは真剣で、さ迷える子羊に、倫には見えたからだった。
「月の誕生日だ。8日。」「…ああ。」そういう事か、倫は納得した。コツ、コツという音が、良く磨かれた黒い床に響いた。ここはオックスフォードとケンジントンの間にある教会に二人は来ていた。平日の午後の礼拝堂には二人以外、誰も来ていなかった。「月一度、俺は自分の誕生日にここへ来て、神から祝福をもらい、懺悔する。」そう言ってサムは長椅子の間に跪いた。「おお。我らの贖い主よ。弟子達にみ姿を現されたように、我らのうちにも現れよ。我らに祝福を…」倫も跪くようサムに言われた。倫は言われた通りにした。「倫。俺達は罪深い。懺悔する。お前を犯したことも、金を取ったことも、み前に隠す事は出来ません。主よ、お赦し下さい。」サムは手を合わせて暫く黙想し、そして目を開けると胸で十字を切った。「…サム。…自己満足に懺悔してどうなる…大切な事は…どう生きるかだ。」倫は言った。「最もだ。…倫、俺を赦してくれ。」サムは倫の前で手を組んだ。「…人を裁くのは人ではない、神だと中学生の時に習った…」倫は言った。「僕は…罰を受けているんだ…」倫は続けた。「罰?何の罰だ?」サムは目を開けて言った。倫は何も答えなかった。それにしてもサムが教会に月一度来て、懺悔するなんて倫には意外だった。サムももしかしたら自分と同じように何か幼少期から、屈折するものを抱えているのかもしれないと倫は思った。…たとえ、口先だけでも、祈っていたサムは真剣で、さ迷える子羊に、倫には見えたからだった。
