
たまゆらの棘
第4章 再臨
倫は二丁目に近い神社にいた。客待ちだ。倫の胸の中は全てへの諦めの虚無感に満ち溢れていた。空しさが神社の暗い木立の上に見える夜空にあいまって、倫は遠藤周作の「悲しみの歌」という小説を、ふと思い出した。あの主人公が自殺したのはこのような神社だったのではないか…そして今の俺のような気持ちだったのではないのか…と。こんな事を思い出したのも、倫は谷口と暮らしていた半年間、谷口の本棚を殆ど読破していたからだった。藤原の…
「いつまでも待っている」という声が倫の耳にこだまして誘惑した。駄目だ。こんな今の俺は恥ずかしくて藤原には会えない!第一、藤原さえ、あの時はそう言ったが、今でもそう思っているとは限らない…とにかく…今は…駄目だ。藤原さえ、もうあそこにはいないかもしれないのに!
倫の頬に一筋の涙が流れた。「藤原…恋しい…」倫は小さな声で呟いた。すると答えるかのように、初めて藤原に出逢った日に言われた言葉を思い出した。
「新宿にいたら…君は駄目になる。」藤原は確かにそう言った。
そうだ。倫は海が見てみたかった。今、何故か、海が見たくなった。倫の貯えは僅かだったが、海を見に行くには十分だった。
「いつまでも待っている」という声が倫の耳にこだまして誘惑した。駄目だ。こんな今の俺は恥ずかしくて藤原には会えない!第一、藤原さえ、あの時はそう言ったが、今でもそう思っているとは限らない…とにかく…今は…駄目だ。藤原さえ、もうあそこにはいないかもしれないのに!
倫の頬に一筋の涙が流れた。「藤原…恋しい…」倫は小さな声で呟いた。すると答えるかのように、初めて藤原に出逢った日に言われた言葉を思い出した。
「新宿にいたら…君は駄目になる。」藤原は確かにそう言った。
そうだ。倫は海が見てみたかった。今、何故か、海が見たくなった。倫の貯えは僅かだったが、海を見に行くには十分だった。
