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たまゆらの棘

第4章 再臨

倫は岸壁の際に行き、下を覗いた。

岸壁の高さは計り知れない高さだった。

目眩がした。下には荒々しく強い波が岩壁を叩いていた。

飛び降りる!


飛び降りるんだ!


倫は怖かった。打ち付ける岩壁の波に飛び込むのが…

倫は怖かった。

素足は震えていた。

裸足の倫は後ずさった。

いつの間にか強い風が吹いていて、今にも倫を吹き飛ばしそうだった。

全てが怖かった。


倫は飛び降りることが出来なかった。

倫は自分の白いシャツが風にバタバタと揺れていて、それさえも怖くなり、両腕で自分を抱きしめた。
「怖い。怖いよ…藤原!」

倫は震える足で自分のバックが置いてある場所へ戻った。

「…は…ぁ」ため息をつくと、ここまできて死ねない自分に呆れ果てた。

「ハハハハハ…」倫は笑った。自分の情けなさに。
「ハハハハハハハハ!」これ以上ない位に、倫は涙を流して笑った。

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