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第3章 影の存在と私達

触れる直前に

「ダメ、ダメです!」

私は大きな声を出した

丸椅子に座っていた私が身を引くのを長谷川が見ながら、唇を動かす。

「嫌か?」

「ちが、違いますけど……
律が、また不快な思いをします」

「なんだそれ」

と言い少し濁った笑みを浮かべる。

伏せた目で私は

「あの無理に触らなくても、私は律が……」

「俺が?」

と言い、彼の手が私の頬に触れていた。不意を付かれた私は目を見開き、長谷川を見るとやはり辛そうで

「む、無理しないで下さい……」

「じゃあ、泣きそうな顔すんな」

言われ、更に悲しくなった。自分には彼の触れない理由を聞く権利もなく、何もしてあげられない自分がちっぽけに感じて

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