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君がくれたぬくもり

第53章 待ち人






あれから数ヶ月。


岳が退院することになった。




家の中はと言うと、岳の退院祝いパーティーの準備で大忙しだ。




しかし、陽菜だけは乗り気じゃなかった。



つい先日理由も無しにふられた男の退院祝いなんてする気にもならない。



陽菜はいつものようにベッドの上で過ごした。




―――退院当日



岳が帰ってくるのは3時。



陽菜は何となく家にいたくなくて外にいた。



行き先は決まってない。



ただ、足だけはある場所へと動いていた。





――――――………




ザザーッ…と波の音が寂しい。



殺風景な浜辺と、冷たい風が涙腺を刺激し…



「ーー…」




ポロポロと、また涙がこぼれだす。




岳………



膝を抱え、一人で泣きじゃくる。



泣いても


岳が自分を見てくれるわけじゃないのに…。




その時、カチッという音と砂を蹴るような音がした。





そして…



「寒くねーのか?」




優しい声…




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