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夢幻の蜃気楼

第3章 異変

「まっ、その前に俺たちがお前の身体測定してやるけどな」
「そうそう、じっくり検査してやるぜ」
下品な笑い声を発する彼らに、僕は硬直状態で見上げるしかなかった。

そんな僕の反応が男たちにとって理想通りだったのか、ますます卑下た笑みを濃くする。


いったいこれはどういうことだ?
この人たちは何を言ってるのだろうか?

僕を奴隷にする? しかも“性奴隷”と言ってなかった?

でも僕はれっきとした男だ。
この人たちの言ってる意味がよくつかめない。
いや、これは幻聴だ。僕は幻聴を聴いているに違いない。それか聞き違いだ。


硬直化したまま、まだ解けない僕に痺れを切らしたのか、腕を無理やりに掴み上げる髑髏のピアスをした男。急に掴んだために、痛覚で現実に戻った僕は腕を離してもらおうと反対側へと引っ張って抵抗し始めた。

そんな僕に男たちは一気に下品な笑いをぴたりとやめ、目を吊り上げて怒りの形相へと一変させた。
「急に暴れんじゃねぇ!!」
赤髪男が一喝する。
その恐ろしい怒声に、僕は大きく震え上がってしまう。

「奴隷のくせに手間とらせるんじゃねえよ」
しゃがんだ赤髪男は僕の顎を持ち上げ、僕を見下ろす形で向かい合った。そこには彼ら風にいわせる上下関係を誇示させる意味合いもあったのかもしれない。

「奴隷は奴隷らしく、小さくなっていうことを聞いてりゃいいんだよ」
逃げ道を塞ぐ、絶望的な男の言葉に、僕はただ唇を細かく震わせるしかなかった。
恐怖を与える赤い象徴の髪の色と、その背景には絶望を与える真っ暗な夜空と、僕が足を滑らせて落ちた不吉の予兆となった冷たい石段。

今まで感じたことのないコントラストに、僕はひたすらこれが夢であってほしいと切実に願った。



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