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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第5章 天上の苑(その)

「失礼でございますが、あなたさまは?」
 浄蓮が落胆をひた隠し、丁重に訊ねると、男は軽く会釈した。声も外見を裏切らず、堂々とした男らしい声である。
「朴ジスンと申します」
「朴ジスンさま」
 男の顔も名も全く憶えのないものだ。
「今日は、さる人から頼まれて、こちらに参りました」
「さる人とは、どなたですか? まずは、それをお伺い致しとうございます」
 ジスンは幾度も頷いた。
「当然ですね。私に頼み事をした人というのは、任ミンソンといわれる御仁です」
 ジスンは浄蓮の反応を窺うように、じいっと見つめてきた。
「任という名に心当たりがありますか?」
 浄蓮は頷いた。ここで、この男に隠し事をしても、話は進まない。この男からできるだけ多くの情報を引き出すには、まず喋らせねばならない。
「もしかして、任ミンソンさまは、任準基さまのお身内の?」
「さようです」
 ジスンの表情と声に、浄蓮の中で閃くものがあった。
 確か、準基は兄がいると言っていた。病がちで身体が弱いけれど、博識家であり、とても尊敬しているのだと。
「ミンソンさまは、準基さまの兄上さまですね?」
「流石だ、実に聡明な女(ひと)ですね。あの生真面目で勉強ひと筋だった準基が生涯かけての恋に落ちるはずです」
 しかし、あからさまに褒められても、浄蓮は少しも心は弾まなかった。
 生涯かけての恋? 大仰なというか、何だか嫌な言い方だ。まるで準基の一生がもう終わってしまったかのような言い方に聞こえないでもない。初めて、この四角い顔をした男に、反抗心めいたものを憶えた。

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