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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第2章 麗しの蓮の姫

「私には家族はおりません。両親は七年前に亡くなりました」
「そう、か。それは済まないことを訊いてしまった」
 哀しみに一瞬翳った浄蓮の眼が再び生き生きと輝き出し、準基は眼を奪われたように釘付けになる。
「でも、私には家族同様に大切に思う人がいます。女将さんから頂いたお金はその人に渡しました。家族も家も失ってから、さんざんその人に世話になったから―、少しでもお礼になれば良いと思って。もちろん、その人は最初は頑として受け取らなかったのですけど」
 女将からの身請料を秀龍はけして受け取ろうとしなかった。しかし、浄蓮が〝それなら預かって欲しい〟と頼み込み、渋々、〝そなたが馬鹿げた考えを棄てて、本来の姿に戻るまで〟という期限つきで秀龍は預かることになった。
 準基が物問いたげな視線を向ける。
「そなたの大切な人というのは、一体―」
「兄のような男(ひと)です」
「兄のような? 真の兄ではないのか?」
「はい、私の父が生前、秀龍さまのお父上と親しくしていたのです。私が物心ついた頃からの知り合いですから、今では本当の兄さんのようなものですよ。本当に融通の利かない頑固な人で―」
 言いかけた浄蓮の言葉を、準基が遮った。
「その男は、そなたが身を売った金を受け取ったというのか? 私には信じられぬ」
 浄蓮は困ったように首を振った。
「違います、私がその人に持っていて欲しいと頼んだんです。先刻も申し上げたように、その人は絶対に受け取ろうとはしませんでした。それに、旦那さま。私は身を売ったわけではありません。身請料といっても、それはあくまでも女将さんの厚意で頂いたものです」
 ただで働いて貰うわけにはゆかないからね。
 あの時、女将はそう言ったのだ。

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