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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第2章 麗しの蓮の姫

「はい、妓生になれば、綺麗な晴れ着も着られます。ずっと、そういう綺麗で華やかな格好をしていたいのなら、妓生になれば良いのだと気づいてからは矢も楯もたまらずに家を飛び出してきました」
 勢い込んで言った浄蓮の頭上で、耳を塞ぎたくなるような大音声が降ってくる。
 浄蓮も本来は男だから、身長はそれなりにあるが、かといって、並外れた長身というわけではない。女性にしてはやや高めといったほどだ。準基は浄蓮よりゆうに頭ひとつ分は高いから、上背はある方なのだろう。
「愚か者!」
 ふいに大声で怒鳴られ、浄蓮は唖然として眼前の男を見つめた。
 一体、何故、自分がいきなり怒鳴られるのか皆目見当もつかない。
「そなたは馬鹿か? それとも、単に何も判っておらぬだけなのか?」
 ふいに逞しい手に両肩を掴まれ、顔を覗き込まれたかと思えば、烈しく揺さぶられた。
「ええっ?」
 予想外のなりゆきに、浄蓮は眼を丸くするしかない。
「そなたは単に綺麗な格好ができれば、自分の身はどうなっても良いというのか!?」
「旦那さま、私には旦那さまのおっしゃる意味がよく判りません。綺麗な服を着たくて妓生になりたいと願うのが、何故、それほどいけないことなのですか?」
 浄蓮は男の激情のままに烈しく身体を揺さぶられながら、問うた。
 準基がハッとしたような表情で、浄蓮から手を放す。
「す、済まぬ。私としたことが、か弱い娘に乱暴をしてしまった」
 だが、と、準基はいっそう真剣な面持ちで続けた。
「もっと自分を、自分の身体を大切にしなければならないよ、浄蓮。そなたは、妓生が夜毎、客の男たちと何をしているか知らないわけではないのだろう?」

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