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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第2章 麗しの蓮の姫

しかし、男の身である秘密を持つ浄蓮は、天地がひっくり返ろうとも、客と褥を共にはできない。もし客と同衾すれば、忽ち重大な秘密が露見してしまうからだ。
 浄蓮は男性であることを隠して苦界に身を投じたが、別に同性愛好者ではないし、その趣味もない。この時、任準基に感じたのは、男女の別など越えた―人間対人間の全く純粋な興味と好感であった。
 出逢ったばかりの女に自分を大切にしろと、ここまでお節介なほどに諄々と言い聞かせる彼の一風、風変わりな優しさに魅せられたのだ。
 たとえ、これから先、この想いがどのように変化しようとも、我が身が同じ性である男と身体的に結ばれることは未来永劫、ない。
 恐らく、翠月楼の女将が妓生に必要な教育―諸芸万端を浄蓮に施しながらも、いまだに彼女(彼)を下働きのまま留め置いているのも、その辺に理由があるに違いない。
 妓生は建て前上は芸を売る、つまり宴席に侍り、花を添え、更に詩歌、管弦、舞などで客を愉しませるのが仕事だということになってはいるものの、現実はその後、客と一夜を共にするのがごく当たり前になっている。
 男と褥を共にできない妓生など、真の妓生とは言えない―とは言い過ぎかもしれないが、実際には、押し倒されたときに秘密がバレれば、そこで終わりなのだ。男を女と偽り妓生に仕立て上げて見世に出していたとなれば、翠月楼の名にも大いに傷つき、下手をすれば、二度と商売ができなくなる。
 女将が浄蓮を妓生として披露する決意をいまだに決められないのも、またもっともだといえた。
 その意味で、女将と浄蓮は一蓮托生なのだ。
―私は安易に誰にでも身を任せるような安っぽい妓生にはなりません。客に選ばれるのではなく、客を選べるような妓生になって見せます。
 準基に告げた言葉は、あながち嘘ではない。

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