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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

「私がお前の身を心から案じていることを、いつも忘れないでくれ。私はお前が好きだ、先刻の接吻もあれはあれで悪くはなかった。お前が本物の女なら、なおのこと、良かったんだがな―」
「へえ、それじゃ、兄貴にとっては、思わぬ役得ってわけだったんだ? やっぱり、兄貴って、俺が思ってたとおりだね」
「な、何だ。何が思っていたとおりだ」
 幾ばくかの焦りを滲ませた整った貌に向かい。
 浄蓮は極上の笑みを浮かべて見せる。
 大概の男なら、一度で魂を抜き取られてしまう、艶やかな微笑。
 しかし、秀龍は眼前の美少女の眩しい笑みよりも、彼女がこれから口にしようとする話の内容の方が気になって、気もそぞろといった体だ。
「つまり、皇秀龍は、むっつり助平だってことさ」
 揶揄するように言うと、秀龍の整った貌が染まった。
「む、むっつり助平だと? お前、一体、誰に向かって物を言っている? 仮にも俺はお前の義兄(あに)だぞ」
「そんなの、ずっと昔から知ってるよ」
 浄蓮が笑っているのを見て、秀龍は更に逆上したようである。
「まあ、まあ、そうカッカッしなさんな。若い中から些細なことでいちいち腹を立ててばかりいたら、若禿げになるよ~」
 軽くいなすと、秀龍は呆れたような顔で押し黙った。かと思えば、また、必死の形相で言い訳を始める。
「べ、別に、私がお前を好いているというのは、変な意味ではないぞ。お前は明賢から預かった大切な弟だ。だから、世話を焼いているだけだ」
「そんなにムキになって言い訳するところが実は怪しかったりして?」
 そう言えば、ますます生真面目な義兄が怒るのを知っているのだ。我ながら、人が悪いなぁと浄蓮は思った。

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