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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第4章 異端者

  異端者

 下手くそな伽倻琴が部屋内から流れてきて、廊下に佇んでいた浄蓮は思わず形の良い眉をしかめた。手には酒肴の並んだ小卓を持っている。
 このまま回れ右をして引き返してしまいたい気持ちは山々だったが、女将直々の命とあらば背くわけにもゆかない。
「失礼致します。浄蓮にございます」
 静かに扉を開け、小卓を持ったまま室内に入る。
 やはり、というか、思ったとおりだ。
 座敷には二人しかいなかった。座椅子(ポリヨ)に座っているのは、あのいけ好かない梁ファンジョンである。その傍らに寄り添っているのは、翠月楼の稼ぎ頭明月。
 いや、この場合、寄り添っているというより、明月はファンジョンの胸ににしなだれかかっていると言った方が適切だ。
 ファンジョンはといえば、相当量の酒を過ごしたものと見える。充血した眼をぎらつかせ、明月のチョゴリの胸許に手を差し入れている。
「フン、やっと参ったか」
 ファンジョンが尊大に言い、顎をしゃくる。
「こちらに来い」
 まるで犬か猫に来いと言うような言い方にも浄蓮は正直、ムッとした。しかし、それを表に出すわけにもゆかず、無表情の仮面を貼り付けてファンジョンの傍にいった。
 小卓を置く暇もなく、座ったかと思うといきなり手を掴まれ、物凄い力で引き寄せられた。
「な、何をなさいます?」
 ファンジョンが口角を上げ、卑猥な笑みを浮かべた。
「そなたはまだ男を知らぬのであろう? マ、少し勉強だと思うて、見ておるが良い」
 ファンジョンが頷くと、明月がいきなりチョゴリを脱いだ。

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