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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第4章 異端者

 酒臭い息を吹きかけられ、浄蓮は嫌悪感に吐きそうになった。
 咄嗟に顔を背けた浄蓮に業を煮やしたファンジョンが荒々しくチョゴリの前紐を解こうとしたが、酔っているせいか、なかなか解けない。苛立ったファンジョンは紐を一気に引きちぎった。
 脱がせるというよりは、むしろ引き裂くといった方が良い烈しさで、チョゴリは呆気なく剥ぎ取られた。
 布の裂ける嫌な音が最も避けなければならない現実に近づいていることを示している。―このままでは、すべて終わりだ。
 流石に浄蓮も焦った。チョゴリの下は胸に白い布を幾重にも巻いている。当然、男の浄蓮に明月のようなたわわな胸が―小さくても、まだあれば良いのだが―あるはずもない。
 普段、浄蓮は布の下に詰め物をして、それらしく見せている。今も布の下には柔らかい手巾などを詰めていることはいるのだが、胸に巻いた布を剥ぎ取られてしまえば、哀しいほど平らな胸であることがバレてしまう。
 ええい、ままよ。
 浄蓮はついに本気を出すことにした。たとえ、どのように結果になろうとも、少なくとも男だと露見するよりはマシだと咄嗟に判断したのである。
 ファンジョンのギョロリとした眼が好色そうに細められる。嫌らしげで淫らな視線がこんもりと盛り上がった浄蓮の胸に釘付けになっていた。
 その手が胸の布にかかろうとしたまさにその時、浄蓮が反撃を開始した。まずは両腕を拘束している明月の腕をふりほどく。更に自分を抱きすくめているファンジョンの顎めがけて鋭い一撃を繰り出した。
 その反撃によって、明月は後方へと吹っ飛び、ファンジョンはといえば、唇か舌を噛んだのか、口からわずかに血を滴らせている。二人共に、実に情けない有り様だ。
 だが、浄蓮の怒りはそれだけではおさまらず、小卓の上にあった銚子を手に取り、ファンジョンの顔にすべてぶちまけてやった。もちろん、最後の一滴まで残さず、だ。

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