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砂糖漬けな関係。

第1章 プロローグ



 ティーカップに浮かんだレモンをティースプーンですくう。
かわいらしい小瓶のふたを開けて角砂糖を三つ取り出した。
そしてティーカップに放り込む。
 

 「そんなにいれるの?甘くない?」

「私は咲枝と違って甘党なのっ。」


 私、榊詩保(サカキシホ)は看護の専門学校に通う19歳。
優柔不断でパっとしない性格。3歳のころからバレエを習っていたけど、今は趣味程度。


 「入れすぎ!!病気になるって。」

「うるさいなぁ。ブラックコーヒー飲める咲枝のが変!!」



 橋本咲枝(ハシモトサキエ)は、バイト先で知り合って仲良くなった。

彼女はとてもさばさばした性格で、“男前”なんて言葉がぴったり。



 私はさっきの可愛らしい、小瓶から角砂糖を再び取り出した。

そして咲枝のコーヒーの中に、ぶち込んでやった。



 「ちょっとー!!」咲枝は慌てた様子で言った。

「えへへ。」


 私が少し笑った。咲枝も笑った。





 私はこんな日常を愛していた。
馬鹿みたいな日常を。



目を瞑って反芻する。何度も何度も。



わざと傷を抉って、思い出す。





 今だって。




このヴァージンロード歩きながら。












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