
紙ヒコーキ
第3章 出会い
私はそのヒトのところに駆け寄った。
なかなか整っている顔だった。
いや、普通にかっこよかった。
首からカメラをぶら下げている。
(写真部のヒトかな…?)
『…雨宮、咲帆サン?』
私が口を開くより早く、そのヒトが口を開いた。
先ほどのか弱い声とは違い、少し低くて芯のある、大人びた声が聞こえた
さっきは、距離も少しあったし、そのせいなのだろうと思った。
『え、あ…はい』
『はい、コレ』
そう言って、私にあの紙を差し出す。
私は乱暴に素早く、そのヒトの手からそれを取った。
(…私、感じ悪い……)
そう思うと同時に、見られてしまったという羞恥の思いにかられて、顔が熱くなる。
『…もしかして、みましたか…?』
私はおそるおそる聞いた。
今まで、笑みを浮かべていたそのヒトは急に慌てたような顔になった。
『あ、ごめんね…!ここで写真とってたら、いきなり風が吹いて、これが落ちてきて…』
そのヒトは、手をばたばたと動かしながら、必死に訴えていた。
どう見ても私より年上だ。
なのに、その姿は自分より年下に見えて、不覚にも可愛いと思ってしまった。
私は、くすっと笑ってしまった。
恥ずかしさはいつの間にか薄れ、顔の熱も引いていた。
あれだけ探していたのに、なんだか、どーでもよくなった。
あんなに必死だった自分が、バカバカしく思えてくる。
