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澪―みお―

第3章 葛原 幸次

大雨だった。
澪を学校へ送り届けたばかりの父親と向かい合ったのは。
妙に薄暗い家の中で向かい合った父親は、こんなにも小さかっただろうか。
無理もない。
こんなに正面きって向かい合ったのは、だいぶ昔のことだから。
老いた父親の目は、心なしか窪んで見える。
あの仏頂面も前ほど恐くは感じなくなっていた。

「なんだ」

先に沈黙を破ったのは父親だった。
薄暗闇に沈む言葉には、いくらか威厳が残っていた。
おれを震え上がらせるには充分だった。

「…話があるんだ。…澪のことで」

震えた声に、澪という名前に微かに父親が表情を変えた気がした。

「…澪?」

固唾をのむ。
一呼吸置く。

「澪には好意を抱いている青年がいる」

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