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澪―みお―

第3章 葛原 幸次


葛原幸次。
彼がワタシの下へ来たのは、お母さんが来てしばらくしてからだった。
彼はワタシのお父さんのようだ。
お父さん…
一緒に暮らしていたお父さん。
死んでほしくはない。
止めないといけない気がするのに、体は動いてくれない。
やっとの思いで、四肢に力を入れる。
ひらりとその場を降り、お父さんと同じ目線になる。

「お父さん…お父さん逝ってはだめ」

声は届かない。
ヨロヨロと近づくけど、間に合わない。

「澪…今行くからね」

お父さん、だめ。そっちにワタシはいないの。

声は音になってお父さんへは届かない。
たくましかったハズのお父さんの背中は、呆気なく闇に呑まれていった。
ワタシには、人を引き留める力がない。
鈍く広がる何かに、ワタシの心は侵された。

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