秘書のお仕事
第3章 社内
『社長ー、仕事内容確認しましたよー』
あたしが部屋に入ると、社長はパソコンの後ろから不機嫌そうな顔を見せた
「ノックしたか?」
『え?いえ』
「たわけ」
何だとてめぇー
社長は手を出し、ちょいちょいとあたしを手招きした
カーペットの床を歩くと、何だか高貴な気分さえ感じられた
『何でしょうか…?』
あたしは少し警戒したまま、社長の隣へ寄った
「相沢」
『はい…』
「部屋に入る際は、ノックしろ」
『…はい…』
地味に、真面目に、怒られてます…
『あの、話が変わるんですが…』
「勝手に変えるな」
『…すいません』
あたしはため息混じりで、パソコンに目を向ける社長を見た
ほんとに、若いな…
30もいってないかもしれない
それなのに、社長か…
あ、きっと親のコネではい上がったボンボンだろうね
「…で、何だ?」
『あ、いいですか?
社長のフルネームって何ですか?』
社長は、失望したような目をあたしに向けた
「菊地陽介(キクチ ヨウスケ)だ」
『へぇ…』
「何だその言い方は」
『いえ、別に』
あたしは素っ気ない態度で、社長に背中を向けた
よっぽど気に食わなかったんだろう
社長は椅子から立ち上がると、扉に向かって歩くあたしの腕を掴んだ