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白い雪のような

第4章 雪解け道

いい加減にだが庭全体を
掃除し終えた洸太は、
最後に離れの庭に向かった。

ここだけは念入りに
やろうと思っていた。
窓から見える景色が少しでも
惺の慰めになればと思ったから。

庭掃除をしながら
惺の部屋を見ると、
誰かが来ているようだ。

惺の部屋を訪れる人は
そう多くはない。


朗か?


わざとらしくないように近づく。

惺の笑い声が聞こえた。


…!


窓の隙間から見える惺は
笑っていた。

洸太が見たことのないような顔で、
声を出して笑っている。

こんな楽しそうな惺を見るのは初めてだった。

胸が痛む。

自分の知らない惺がいる。

洸太は相手が気になった。

今立っている位置からは
相手は見えない。

乗り込んでも良かったのだが、
それもなんだか癪な気がして
見える位置を探してみた。

やっと相手の顔が判別できる
所を見つけた。
が、見た瞬間洸太は
持っていた箒を落とした。

惺の部屋で、
笑いかけているのは
洸太の父だった。




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