向かいのお兄さん
第20章 あたしもね
『はぁ…はぁ…っふぅえっぐ…えっぐ…』
「まだ泣くのは早いだろ」
大きな左手が
あたしの頭を掴んで
くしゃくしゃと乱した
あたしは涙を何度も拭いながら
何度も頷いた
ありがとう…直也…
「試験会場は〇〇大学だったっけ?」
『…うん』
「今まで覚えたこと、忘れてないな?」
『…うん』
直也はあたしの手元をチラッと見て
「お前手袋は!?」
と叫んだ
『…忘れた』
「ばっかじゃねーの」
直也は、あたしの両手を上から包み込むようにして握った
「すんげー冷えてんじゃん…書けなかったらどうすんだよ」
あたしは、あたしの手を握る直也の手を
じっと見つめた
『直也の手が…あったかいから…』
だから
平気…
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