 
向かいのお兄さん
第24章 今この時間
『待て馬鹿』
「ぐえっ」
あたしは直也の襟首を掴み、こっちを向けた
直也は自分の首を押さえながら、涙目を見せる
「み…美咲ちゃ…何?」
『まだ、帰んな』
あたしは直也の腕を掴んで、ずかずかと歩いていった
その先は、直也の家…
車内からこっちを覗く和樹が見えたけど
あたしは目配せだけして、マンションに入った
「ちょっ…入んの?」
『当たり前じゃん、鍵持ってる?』
「持ってるわけない」
『…ちっ』
あたしは行き先を少し変え、マンションの管理人さんの所へ向かった
『すいません』
「はぃ…なんでしょぅか」
扉を開けて出てきたのは、目をショボショボとさせたお爺さんだった
『こいつ、部屋の鍵無くしたんで合い鍵もらえませんか?』
あたしは直也の顔を指差して、お爺さんに示した
 
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