
向かいのお兄さん
第39章 元通り
「それより、どうすんだよ?由紀ちゃん」
「あ」
すっかり忘れてた
と、直也は由紀がいるであろう駐車場の方へ目を向けた
どうでもいい
などと済ますのは、さすがに酷いだろうか…?
考えていたところで、由紀が戻ってきた
その顔は涙でぐしゃぐしゃで、化粧も落ちてしまっている
「…由紀、あのさ…」
直也が話し掛けると、由紀は首を横に振った
「あたし…バイト辞める」
小声で良い、更衣室へ向かおうとした
しかしすぐにその足が止まる
「美咲ちゃんって、…ずるいね」
「は?」
「直也も寺内君も、夢中にさせちゃうんだから…」
悔しそうに下唇を噛んで
恨めしそうにこちらを眺めた
