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願わくば、いつまでもこのままで

第11章 邪魔者が一人





不規則


かつ


抑えるような息




震える声




すする音が背中越しに聞こえてくる






「兄貴?」




陽はその場に立ち上がる。



和斗からは
背を向けたまま返事どころか反応がない




「な、兄貴……泣いてんのか……?」



「……うっ……せ、え……よっ……っく……」






あまりの衝撃に


何をすればいいのか陽にはわからなかった。






親代わりのあの兄貴が

最後に自分の前で泣いたのは母親の葬式



もう随分と前のことで

弟は兄貴の涙など忘れていた。




あの兄貴が
俺の前で泣いている……!?





「な、んで……泣いてんだよ、兄貴」



「おまっ、だからさあっ!!」




和斗が振り向く。


濡れた頬についぎょっとした。





「今ではもう比奈は陽のことが好きで
でも俺はずっと前からあいつを愛していて、そりゃ泣きたくもなるだろ!?
わざわざ結婚するまで会わせずにいて
指輪とか戸籍とかちゃんと形にして
なのに!後からきたお前が!
大切な弟と最愛の妻が両想い!?
そりゃ泣きたくもなるだろうがよ!
…………泣いちゃ悪いかよっ……」






見られたくないのだろうか




あー、と声を上げながら

和斗は腕を目に押し付けるようにして隠した。




言ってしまったと後悔しているかのように

ため息交じりに声をたてた。








問題なのは

事実がどうであれ
兄貴が比奈ちゃんにを見てそう思ったということ




陽は聞く。






「……じゃあ、兄貴はどうしたいんだ?
俺に、どうしてほしい?」








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