中村 心響さんの作者ニュース
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アルデルセルン童話〜悲しい話。
「あのっ…マッ……
…ッチ…はいかがですか…
あっ、そこの方、いりませんかっ?」
少女は道行く人々に声を掛けては煙たく足らわれていた。
「どうして誰も買ってくれないのかしら……まだ、こんなに売れ残っているわ…」
途方に暮れて暗くなった夜空を少女は見上げる。上からはチラチラと真っ白な雪が落ち始めていた。
「はあ…寒いっ…」
かじかむ指先を見つめる。そして肩を縮めて歩く男にまた声を掛けた。
「こんな日はこれを擦るとすごく暖かいですよっ…」
少女は男の目の前でそれを擦って見せて手を当てる。
「ほらっ筋肉の熱量で沢山擦ると暖かいっ御願いだからお一つっ…」
「うるせえ! そんなんいるかっ!! 場所とってしゃあねえってんだ! たくっ」
「あっ…」
少女はまた手を払われる。
「どうしよう…こんなに余ってしまってもう倉庫にも入りきらないわ……」
マッチョ売りの少女は売れ残ったマッチョ達を途方に暮れた目で見つめていた。
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