NEWやぶさか。さんの作者ニュース

ともだちの五回忌

あれから5年経った。
あれから何一つ変われなかった。

毎年行って手を合わせて拝んで涙を流していた。けれども何にも変われなかった。

一、二年後に出向いた頃はあの時のままだったあの場所も、三年後には工事現場になっていて、去年にはもう工事も最終段階だった。

近隣に住んでたでっかい田舎民家は、そこに住む偏屈な爺さんといっしょに移転させられてた。

お前が大好きだったあの野原も草っぱらも綺麗に刈られて土一色になっていた。

近くを流れていた川もコンクリートで埋め尽くされて、もうあなたの顔を拝むこともできなくなっていた。

お前と遊んだあの場所は……相変わらず汚いまんま。変わったのは不法投棄されたゴミの種類くらいか。

当時使ってた携帯はもう古くなって壊れちゃって、あのころの写真も動画ももう見れなくなっちゃったよ。

けれどしっかりとお前の残像が頭に残っているよ。忘れることはない。

生前の永六輔さんが言ってた「人は誰かに忘れられた時はじめて死ぬんだ」って。

だから俺は忘れない。お前を死なせはしない。貴方も生かせ続ける。

……けどなあ。

もう今年から行くのを辞めようかと思ってるんだ。

あれから5年経ったけどさあ、何一つ変われてないんだ俺。

もう顔向けすらできなくなってるんだ。

毎年行って、お前と貴方の墓前に行って誓ってることが何一つ実現できてなかったんだよ。

その癖「お前と貴方の分も生きていく」なんて偉そうに抜かしていたんだよ。

おまけにまた、同じことを繰り返してしまった。

もうダメなんだよ。甘えて自分を正当化してただけの屑野郎なんだよ。

行ったことでまた甘えて同じことを繰り返す。誓いを破って。誓ったことすら忘れて。そしてまた来年になって二人のところに出向く。そんなんじゃもうダメなんだ。

だから。
さようなら。

いつか俺が本当にお前と貴方の分も生きていけるようなひとになるまでの間。甘えて情けない姿を見せなくて済むように。

生まれ変わることはできないよでも変わってはいけるから。

さようなら。ありがとう。





ごめんなさい。
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