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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

 それは先刻、ソル老人やマル、マルの美しい母の前で見せた分別ある大人の男といった表情とはまったく違うものだ。別人かとすら思ってしまうくらいの変貌ぶりだ。
 相手によって見せる顔が違うのは、本人はそれを意識してやっているのかどうか。もし、故意にやっているとしたら、とんだ食わせ者だけれど、多分、彼自身はまったく意識していないはずだ。それは今の無防備すぎる彼を見ていれば、よく判る。
 幾ら自分をさらけ出すといっても、ここまで素の自分を露わにするのは故意にできることではない。
「眠らないの?」
 明姫が優しく問うと、彼は首を振った。
「眠りたくない」

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