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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第15章 第三話 【観玉寺の廃妃】  再生

 別にユンがあれだけで慈鎮をどうこうするとは思わないけれど、あの夜の彼は少し常軌を逸していた。それを思えば、万が一、災いが慈鎮の身に降りかからないとは限らない。
 ユンは国王なのだ。その気になれば、明姫も慈鎮も何なりと理由をつけて処断できる立場にある。
 大好きなユンをそんな風に権力を笠に着て横暴にふるまう暴君だと考えるのは哀しい。でも、あの夜の彼の酷い仕打ちを思い出すと、どうしても悪い方へと考えてしまうのだ。
 今、雪はすっかり止んでいる。しかし、そのせいで川水は身体の芯までかじかんでしまうくらいに冷たかった。この真冬の逆戻りしたかのような寒さで、膨らみかけていた桜の蕾も開くのを躊躇っているようである。

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