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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第3章 第一話【桜草】 逢いたくて~恋ごころ~

 まあ、それも所詮、言い訳にしかならない。あの時、明姫はユンを振り切って帰ろうと思えば帰られたのだ。なのに、少しでも長い間、彼の側にいたくて明姫自身が長居をしてしまったのだから、理由にはならないのだ。
 あの夜、ユンは宮殿の正門前まで明姫を送ってくれた。そして、物陰から
―私はここで見ているから、行きなさい。
 と、保護者ぶって言った。
 明姫は背後のユンを気にしながら、何度か振り返ったけれど、ユンの姿は見えなかった。物陰からひそかに見ているのか、既に帰ってしまったのかは判らなかった。
 別に門兵に姿を見られても構わないのにと思うのだが、彼の用心ぶりは度を超しているようにも思えた。

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