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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第24章 第二部 【身代わりの王妃】 ひそやかな恋情

 彼女は自分が意に反して大きな声を出したのを恥じている風だ。白い頬に朱がのぼり、抱きしめたいくらい愛らしかった。
「申し訳ありません。でも、折角綺麗に咲いている花を摘み取っては、花が可哀想です」
 刹那、彼の脳裏に遠いある日の光景が甦った。
 広大な宮殿の一角、一面に散らばった桜草、それを一本一本拾い集めていた可憐な少女の面影。
―折角綺麗に咲いているのだもの、このまま棄ててしまうのは可哀想だから、持って帰って水に挿してみるわ。
 優しい笑みを浮かべていた少女の声までもがありありと思い出せる。十八年の年月を経てもなお、色褪せることのない鮮やかな出逢いの一瞬だ。

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