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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第24章 第二部 【身代わりの王妃】 ひそやかな恋情

 だが、時ここに至り、彼も認めないわけにはいかない。自分は自分が考えている以上に、あの若い妻に心奪われている。
 とはいえ、先刻、強い衝動に煽られて春花に口づけてしまったのは、やはり彼女の上に明姫の面影を見たからだ。針茉莉を見て歓声を上げていた彼女はあまりにも愛らしく、しかも、振り向いた一瞬の表情は十八年前の明姫との出逢いをまさに再現するようであった。
 では、やはり、自分はあの娘を明姫の身代わりとして見ているだけなのか? 許春花という一人の少女として求めているのではないと?
 巡る想いに出口はなかった。彼は大きな息を吐き出し、疲れ切った表情で歩き始めた。

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