テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第3章 第一話【桜草】 逢いたくて~恋ごころ~

 彼等はしばしば、その姿を生きている者に見せ畏怖されるが、大抵の場合、怨霊を見たというのは、見回りの内官が寝ぼけていたりして夢幻を見るのだ。
 この殿舎に住んでいた妃を鞭打った王妃というのが、即ち今の大妃、現国王の生母である。
 明姫はそういった類の怪談は正直、あまり興味もないし半信半疑といったところだ。頭から否定する気もないけれど、どこまでが真実か知れたものではないとも思う。
 そんな彼女であっても、流石にいわくつきの件(くだん)の殿舎を夜更けに訪れるというのは、あまり気持ちの良いものではない。たとえ、その中に先王の寵妃の亡霊ではなく、恋しい男が待っていたとしても。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ