身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い
明姫は小さく首を振った。いけない、あの夜のことを考えまいとすればするほど、どうしても思い出してしまう。やはり、昨夜見た夢のせいだろうか。
夜空を焦がし燃えていた紅蓮の焔、焔がぱっくりと口を開けた巨大な魔物のように屋敷を飲み込んでいた―。いつもの、あの夢。
明姫は俄に悪寒を感じて、華奢な身体を震わせた。忽ちにして春のたけなわの長閑な庭園が色褪せた無味乾燥なものにしか見えなくなってしまう。
いつのまにか白い蝶は消え去り、後には咲き誇る緋牡丹が風にひっそりと揺れているだけ。そこで、明姫は初めて我に返った。
「いけない、こんなことをしていては、また崔尚宮さまに叱られてしまう」
夜空を焦がし燃えていた紅蓮の焔、焔がぱっくりと口を開けた巨大な魔物のように屋敷を飲み込んでいた―。いつもの、あの夢。
明姫は俄に悪寒を感じて、華奢な身体を震わせた。忽ちにして春のたけなわの長閑な庭園が色褪せた無味乾燥なものにしか見えなくなってしまう。
いつのまにか白い蝶は消え去り、後には咲き誇る緋牡丹が風にひっそりと揺れているだけ。そこで、明姫は初めて我に返った。
「いけない、こんなことをしていては、また崔尚宮さまに叱られてしまう」