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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 宮中では、たとえ伯母と姪であろうが、そんなことは通用しない。殊に崔尚宮は身内であろうと容赦はない。失敗をすれば、即座に厳しい叱責を受けるし、時には罰も受ける。宮中には、明姫が崔尚宮の姪であると知る者はいない。何故なら、明姫は正確な素性を隠して宮仕えに出ているからだ。
 明姫は足許に置いてあった風呂敷包みを腕に抱えた。山吹色の風呂敷に包んだそれは、かなり重みがある。かれこれ四半刻余り前、宮中の書庫に行って、指定された数冊の書物を取ってくるようにと崔尚宮から言いつけられた明姫である。
 それらの書物は、王室の歴史を始祖太祖(テージヨ)に始まって現国王直宗まで綿々と綴ったものらしい。今、大妃殿では、新しい側室のためのお妃教育が始まっている。

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