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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第24章 第二部 【身代わりの王妃】 ひそやかな恋情

 春花は美味しそうに揚げパンを食べている。若いだけあって、見ている方が気持ちよくなるくらいの食べっぷりだ。
 ふいにユンは奇妙な浮遊感に囚われた。
―ユン、美味しいわ。
 かつて隠れ家で明姫と一緒に揚げパンを食べたことがあった。もう、十八年も前のことだ。
―ユン、私、揚げパンが大好きなの。
―そなたは見かけによらず、食欲旺盛なのだな。
 他愛ないやりとりが楽しくて、このまま何時間でも明姫と一緒にいたいと思った。
 ユンは首を振った。いけない。また、過去に引きずられそうになっている。春花といると、自分の側にいるのが明姫なのか、まったく別の女なのか判らなくなってしまう。

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