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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第3章 第一話【桜草】 逢いたくて~恋ごころ~

 にしても、仕事で宮殿に詰めている身なのに、呑気に女官と逢瀬を持っていても良いのだろうか?
「ユンはどこの部署にいるの?」
 そんなことを考えながら、何の気なしに訊ねると、彼は初めて少しだけ笑った。
「集賢殿(チッピョンジョン)だよ」
「集賢殿?」
「そう。集賢殿でそこそこの位階を賜って、日々、真面目に勤務している中級官吏だよ」
 では、町中で彼が集賢殿の学者だと名乗っていたのは、やはり真実だったのか。
 あの日の彼の服は極上の絹で仕立てられていた。あの身なりが中級両班のものとは少し妙な気もするが、家門の高低に拘わらず、金を持っている両班がいないわけではない。勤務する部署や役職によっては、表向きには禁止されている賄賂が入ってくる。

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