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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第25章 第二部 【身代わりの王妃】  想いのゆくえ

 かすかに軋む扉を開き、中へと脚を踏み入れる。自分を陵辱しようとした男の持ち家しか行く当てがないとは皮肉なことだ。
 緩慢な動作で室内を見回すと、昨日、ここを王とともに訪れたときのことが嫌でも思い出された。あのときは優しくしてくれたのに、何故、昨夜はいきなり、あんなことになってしまったのか。やはり自分が王を怒らせてしまったのがいけなかったのだろうか。
 塵一つなく磨き上げたこの家を見て、王はとても歓んでくれた。この家を出て市の露店で菫青石のノリゲと簪、指輪、それに靴まで買ってくれたのだ。

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