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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 第一、蝶を飼おうとしたところで、狭い虫籠に閉じ込めれば、生きていたところで、せいぜいが数日の生命だ。自然界に生きるものは伸びやかに自由に羽ばたくからこそ、生き生きとして美しい。その美しさ、生命を理不尽に奪う権利は誰にもない。
 できれば、ただ眺めるだけが良いのは判っていたけれど、明姫のその誘惑心をくすぐってやまないほど、その可憐な蝶は魅惑的だった。そう、丁度、今にも開こうとしている花の蕾のような彼女自身のように。
「良い子だから、あと少しだけ、そのまま、じっとしててね」
 呟き手を伸ばす。白い小さな手が蝶に触れようとしたまさにその瞬間、蝶はひらひらと舞い上がった。

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