身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い
「あっ」
明姫は悲鳴じみた声を上げ、慌てて周囲を見回した。今は勤務の真っ最中、こんな場所で呑気に蝶と戯れていて良いはずがない。
蘇明姫、当年とって十五歳になる。六歳で女官見習いとして宮中に上がり、今年で十年経った。大妃(テービ)に仕える崔尚宮(チェサングン)の許で女官としての心得や行儀作法・教養万端をみっちりと仕込まれ、去年の春に正式な女官と認められた。
「ああ、折角、あと少しで捕まえられるところだったのに」
明姫は小さく舌を出し、また、慌てて周囲を窺う。幼い頃からのこの癖は幾ら崔尚宮に厳しくたしなめられても、一向に直らない。
明姫は悲鳴じみた声を上げ、慌てて周囲を見回した。今は勤務の真っ最中、こんな場所で呑気に蝶と戯れていて良いはずがない。
蘇明姫、当年とって十五歳になる。六歳で女官見習いとして宮中に上がり、今年で十年経った。大妃(テービ)に仕える崔尚宮(チェサングン)の許で女官としての心得や行儀作法・教養万端をみっちりと仕込まれ、去年の春に正式な女官と認められた。
「ああ、折角、あと少しで捕まえられるところだったのに」
明姫は小さく舌を出し、また、慌てて周囲を窺う。幼い頃からのこの癖は幾ら崔尚宮に厳しくたしなめられても、一向に直らない。